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吉田喜重監督哀悼[日記] 2022/12/19

吉田喜重

この8日に亡くなった映画監督の吉田喜重氏を悼む記事が新聞に寄稿されていた。

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私はコーヒーが飲めなくなったのと同じ頃、映画も見られなくなっていました。
限られた作品時間のなかで必ず訪れるヤマ場、そこに至るために設定された「逆境タイム」に耐えられなくなっていたのです。

現実生活が辛いことの繰り返しなのに、たとえ疑似体験でも何故、それを味わわなければならないの?
というのが、当時の理屈でした。
そこから私は楽しい事しか描かないライトな方面へ向かってゆきます。
ちょうど若者向けに、「好きなことだけでいいのか?」なんて論調が新聞を賑わせたりもした時期でしたが、それはまた別の機会に…。

映画監督の舩橋淳氏の寄稿でした。
小津安二郎とも親交があった吉田監督の知られざる「時代に対しての叛逆精神」を綴っています。

型通りの歴史的解釈や父権社会に対する懐疑の目。
映画など「まやかし」に過ぎぬ、と何度も繰り返し指摘されていたそうです。

「同時代の感性だけに反応する映画は、時間が経てばあっけなく古くなる。しかし、吉田喜重の作品群は、時代を超越して輝きを増してゆく。それは「まやかし=フィクション」としての映画の本質を見抜いた吉田だからこそできたことであり、この無時間性こそ、彼が批判しつつもリスペクトを表明して続けていた小津安二郎と肌を接し合う点であった。」
映画監督舩橋淳
「吉田喜重監督を悼む」

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古いものを扱い、活計を立てる私にとって舩橋監督の「同時代の感性だけに反応する映画は、時間が経てばあっけなく古くなる。」という表現に何となく引っかかっています。
骨董でも同じことが言えるのです。
もともと古いのに、潮目が変わればさらに「あっけなく古くなる」。
20年ほど前の雑誌『太陽』や当時さんざ出版されたムック版の古美術特集号を紐解くと
ため息とともに思わず「古いなぁ」と呟いてしまいます。