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冬木沢 八葉寺[日記] |
2016/05/18 |
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今回の旅の目的はこの八葉寺を訪れることでした。 半月ほど前の交換会で、木製の五輪塔が出品されました。 気にはなったのですが、どうみても江戸のもの、おまけに出た場所も特定できないのなら、 「特に買わなくてもいいか、」と。 この頃よく罹患する<卒業した気になっちゃた病>が、またもや出てしまったようです。
振り払ったつもりがどうにも頭の隅から離れず、資料を当たるとこれに行き着きました、『会津八葉寺木製五輪塔の研究』。 買ったのは関西の後輩だったので、素知らぬ顔で電話を入れると売約済。 わかっているお客様が買われたそうで、「長谷川さん知ってました?あれって多分八葉寺のものなんですよ、会津の。」 知ってらぃ、だから電話してんじゃねぇか、と、喉まで出掛かったが、 おそらくお客様に教えてもらうまで知らなかったであろう、会津出身の彼との今後の付き合いを考え飲み込みました。 大人の対応でしたね、今考えても。
こんなブログでねちねち仕返ししている自分が愛おしくないわけでもないのですが、 悔しかったのと、<卒業した気になっちゃた病>からの恢復を図り、 行ってまいりました、会津・冬木沢の地まで。
この地では珍し強く風の吹く日でした。 田畑の中の一本道には、途中途中に小さな祠があったりと、次第に野辺に続く道の様相を呈してきます。 緩くカーヴした先の小山には、はや尋常ならざる雲が立ち込めているかのよう。 此処はかつては死者を葬送する野辺であり、打ち捨てられた死骸を空也上人が埋葬したことから、あの世とこの世を繋ぐ場所して、会津の祖先信仰の中心地となったと言い伝えられています。 案内して頂いた副住職の話では戦前までイタコのように口寄せする<オシラサマ>と呼ばれる女性達が此処で祖先の霊を降ろしていたそうです。
そんな地ですから、元興寺と同じような庶民信仰が根強く残っていたのでしょう。 しかもぐっと泥臭く。 収蔵庫の木製五輪塔も見せていただきました。 写真もどうぞ、ということでしたので撮らせていただきました。 すごい数の五輪塔。これが阿弥陀堂の内部に壁といい梁といい、いたる所に打付けてあったそう。 その数、残っているものだけで15,000基。 大樹にぶら下がる蛹のように、ウジャウジャと気味悪く。(書籍の画像右頁参照)
まだまだカッコつけている時ではないです。卒業なんてありません。 泥臭く、人に嗤われようと、 美術品から無限に遠い<美術品>を扱ってゆかねば。 専門店ですからね、なんといっても。
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