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阿倍野 明治屋[日記] 2010/05/14

その晩は肥後橋に宿をとり、翌朝、東洋陶磁美術館へ。
水注のいい展覧会やっていました。

川好きの所為でしょう、中ノ島は何時来てもいいです。
♪なかのし〜まブルースよぉ 
しらずしらず口ずさんでいます。

そして、昼下がり。
晴れているのに雨が降ったり止んだり。
狐の嫁入りです。

この秋に移転が決まっているのでそれまでに、と思っていた
阿倍野<明治屋>へ。

滅多にしないのですが、どういうわけか今回、
初めて行く明治屋の評判が気になってしまいます。
検索してみると、曰く、最低のサービスの店に行ってしまった、とか
絶対お勧めできません、などきつい言葉のオンパレード。

気にしないようにとしても、拭いきれぬ一抹の不安を抱え
暖簾を潜りました。

しかし、店に一歩入った途端すべてが杞憂に、というより
世知辛い世々のすべてが意味をなくすような開放感。

座る席さえ、ずっと昔から決まっていた如く自然に迎えてくれ、
薄くきれいなガラスの燗徳利、柚子の香漂う湯豆腐。
道に面した格子窓からは朝日のように光りが差し込み、
隣席のご常連が言葉少なに心を解きほぐしてくれ、
それらがみな美しく調和して、感動で言葉も出ないほどでした。

お客の数、店人との相性、天気、時間、いろいろな要素が
因り合った結果でしょうが、なんとも素晴らしい夢のようなひと時を過ごさせていただきました。

一人よがりかもしれませんが、「夢のようなひと時」と思ったのは私一人ではない筈。
その時、お客も店の人も、店に居合わせた全員がある種の感動を感じていた、
気が、します。

皆、言葉を選び、この一瞬が、一秒でも長続きするよう、
大切に大切に、
この儚い時間を壊さぬようお互い大事に守っている。
そんな連帯感すら感じました。

飲食(オンジキ)の場では稀にそういった神懸った時が訪れるのでしょうか。

そう思いたいです。